コラム一覧仕事と自殺予防(6)相談機関の連携体制をNPO法人自殺対策支援センター「ライフリンク」代表 清水康之さん自殺対策について聞きました。 ――日本の年間自殺者は昨年まで11年連続で3万人を超えています。 自殺者は1998年3月に激増しました。北海道拓殖銀行が経営破綻(はたん)に陥り、山一証券が自主廃業した97年の年度末です。経済状況の悪化に引きずられる形で3万人を超え、その後、高止まりが続いています。 ――最近の傾向は? 昨年秋以降、金融不安から派遣切りなどが問題になりましたが、今年の自殺者は上半期だけで1万7000人を超え、過去最多になる危険があります。従来は50歳代などの中高年層が中心でしたが、昨年は30歳代が過去最多と注目されました。派遣切りや就職難で、若年層も追いつめられていると感じます。 ――増加の原因は? 経済的な要因が深くかかわっていますが、理由はひとつだけではありません。私たちが全国の約300人の遺族に調査したところ、自殺した人は四つ程度の問題を抱えていました。 無職者では、「失業」から「生活苦」を招き、「多重債務」に陥った末、「うつ病」になるケース。働いている人では、「配置転換」と、それに伴う「過労」や「人間関係の悪化」から「うつ病」になるといったケースが目立ちました。 ――どんな支援が求められているのでしょうか? 私たちの調査では、自殺者の72%が、精神科の受診や、多重債務を弁護士に相談するなど、専門家に助けを求めていました。45%は亡くなる直前1か月以内でした。つまり、助けを求めたが、生きるために十分な支援は得られなかったわけです。 無職者が病院に行き、治療を受けたとしても、失業、生活苦、多重債務の問題はそのままです。逆に「うつ病」を抱えた状態では、就職も金銭問題への対処にも適切な判断がしにくくなります。多分野の相談機関の「連携」が必要です。 ――どのような連携が効果的ですか? 例えば、ハローワークに、保健師が常駐し、心の健康相談を行ったり、弁護士が多重債務に対する無料法律相談を開いたりする。逆に、医療機関や保健所から、必要なら弁護士会の法律相談やハローワークなど、問題に合わせた窓口を具体的に紹介できる枠組みを作ることです。 相談窓口や支援制度の存在を知らずに悩み続けている人も多いので、助かる人は増えます。ライフリンクは、東京都内で自殺者が多い足立区と協力し、関係機関に呼びかけ、実践的なネットワークを作ろうとしています。(高橋圭史) ◇しみず・やすゆき 元NHKディレクター。自殺者の遺族の取材をきっかけに、対策の推進役を担おうと2004年に退職。NPOを設立し、現職。 ◇全国の自殺対策相談窓口が検索できるライフリンクデータベースのホームページは、http://www.lifelink‐db.org/ (「医療ルネサンス」から) (2009年11月6日 読売新聞)
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